がんの転移とは?5年生存率と死亡率のよくある誤解

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皆さま、こんにちは。
今回のテーマはがんの転移です。

転移という言葉そのものはご存知の方が多いと思います。しかし、転移がんと言われた体の中でなにが起こっているのか具体的にイメージできる人はいるでしょうか?

今回は転移とそれにまつわるお話を中心にしていきますので、ぜひ皆さまのがん治療にお役立てください。これを知ればご自身にとってどんな治療が必要なのかおわかりいただけると思います。

それでは早速【がんの転移】についてご案内いたしましょう。

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がんの転移とはどういう状態なのか

がんの転移を簡単にお伝えするならば「がん細胞が生まれた臓器を飛び出して、離れた臓器に移動し新たな住まい(病巣)を作ること」となります。

がん細胞は自らが増え続けるために栄養を求め別の場所へ移動する力を持っています。そして移動を繰り返すことで全身へと広がっていきます。さらに転移はいつどのタイミングでも起こる可能性がありますので、がんと診断されたときに同時に見つかる場合もあれば治療中・治療後に発見される場合もあります。

また、転移と似た言葉に「浸潤(しんじゅん)」があります。浸潤とは、水が染み込んでいくようにがんがその周囲の組織に入り込んでいくことを言います。周囲に攻め込むのが浸潤、遠くまで移動するのが転移です。転移がみつかればステージ4。一般的に進行がんと言われる状態です。

悪性腫瘍と良性腫瘍の違いとは

がんは悪性腫瘍という呼び方をする場合があります。腫瘍とはいわゆるできもののことで、異常に細胞が増えてかたまりになりイボやこぶ、ポリープのような形状になったものをさします。腫瘍はその性質により「悪性腫瘍」と「良性腫瘍」にわかれ、良性腫瘍の代表的な例としては子宮筋腫や卵巣嚢腫などがあります。

良性腫瘍はがんと同じように増殖をしますが、浸潤や転移をすることはありません。基本的に身体に悪さをすることもありませんが、大きくなりすぎて何かしらの症状が出そうだと判断できる場合など状況により手術で取り除くこともあります。

腫瘍が悪性だと診断された場合はがんとなります。転移や浸潤はがんだけにある現象です。多くの良性腫瘍は輪郭の部分がはっきりしていて周りの組織に侵入していくことが無いのに対し、悪性腫瘍は周囲の正常な細胞に食い込んでいくことがあります。また正常な細胞は転移先で生きていくことはできませんが、がんは移動先でも栄養を取り込み新たな住まいを確保することができます。

転移や浸潤が見つかると手術ですべてのがん細胞を取り切ることが難しくなりますから完治の可能性が非常に低くなります。また、転移が確認されず手術を受けることができたとしても、実はすでに微小ながんが転移を起こしていて、術後一定期間を経たのちにそれが発見されるということも多々あります。手術後の再発に関しては前回のブログにも詳細を載せていますのでそちらも併せてお読みください。

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悪性腫瘍を手術によってすべて取り除いたと判断され、その後5年間で再発がなければ完治と診断されます。言うなれば、転移や浸潤の有無が完治を目指せるかどうかの分かれ道となり、がんで亡くなるか・亡くならないかの明暗を分けるとも言えるのです。

がんの手術で取り残しを判断する専門ドクターのお話

がんは浸潤している可能性があるため手術ではがんを取り切れたかどうか確認する必要があります。手術中にこの確認をすることを術中迅速病理診断(じゅつちゅうじんそくびょうりしんだん)と言い、切除した組織の周りにがんが残っていないか顕微鏡で詳しく検査をします。手術中に素早く行いますので迅速という言葉が入っています。

この検査には専門のドクターがいて、それを病理医(びょうりい)と言います。検査が専門なので、普段は患者さんの前には姿を現しませんが、良性・悪性の判定や、がんが取り切れたかの判断など重要な決定を下しているため病理医はドクターズドクター(医者のための医者)とも呼ばれ、いわば縁の下の力持ちといえる大切な存在なのです。

がんの主な転移先

がんは種類ごとに転移する臓器がほぼ決まっています。がんの主な転移(浸潤)先は以下のようになります。

肺がん   肺(反対側の肺や同じ肺内で浸潤)・肝臓・脳・骨
乳がん   肺・肝臓・脳(肺を経由して)・骨
胃がん   腹膜・肝臓・近くの臓器へ浸潤(結腸・膵臓など)
大腸がん  肺・肝臓・近くの臓器への浸潤(膀胱・膣など)・脳(肺を経由して)
肝臓がん  肺

転移しやすい部位の一つに肺が挙げられますが、その理由として他の臓器にできたがん細胞が血液の流れに乗って肺に到達し、酸素を取り込むために張り巡らされた毛細血管に引っかかることで肺転移が起こると言われています。

がんは発生した部位によって性質が異なりますが、転移したがんは原発(生まれた臓器)のものと同じ性質を持ちますので、原発の治療法にのっとった治療を行います。
(日本人がアメリカに行ってもアメリカ人にはなりません。あくまでアメリカにいる日本人ですよね。それと同じようなイメージです。)

例えば、肺がんが肝臓に転移した場合、肝臓にある腫瘍は肝臓がんではなく肺がんの細胞です。この場合、肺がんの治療(肺がんの抗がん剤を使用する等)をしていくことになります。また、治療を受けてから一定期間、転移の可能性のある臓器については基本的に保険診療内で検査をすることができます。

5年生存率と死亡率の考え方について

皆さまはこの数字を見てどう感じますか?

胃がんの5年生存率
ステージ1  97.4%
ステージ2  65.0%
ステージ3  47.1%
ステージ4   7.2%
(全国がんセンター協議会HPより)

5年生存率とは「治療してから5年後に生きている人の割合」です。

多くのがんは治療後5年間再発しなければその後の再発の可能性は低くなるため、5年という一つの基準を設けてその時点で治癒とみなします。

これを踏まえたうえで上記の表のステージ2を見てください。ステージ2の5年生存率は65.0%ですから胃がんのステージ2と診断された人の約6~7割が5年後にも生存しているということですね。

しかし、ここで注意が必要です。生存率はあくまでも生存している人の割合なので、この6~7割の中には「途中でがんが再発し治療を受けながら5年後に生存している人」や「手術でがんが完全に取り切れず闘病しているが5年間乗り切っている人」なども含まれています。

要するに、5年生存率は治った人の割合ではないのです。実はこれを間違えて理解されている方がけっこういらっしゃいます。

生存率はよく完治率と誤解されがちなのですが、5年生存率は文字通り5年間生存している人の割合でありご存命であればたとえがんが治っていなくてもこの数字の中にカウントされているのです。

他にも10年生存率というデータがあり、それによるとステージ2の生存率は52.2%となっています。つまり5年後に生存していた13%の方達でも、その5年後には再発や転移により亡くなっていることが分かります。そして統計は取られていませんが、15年後や20年後にはもっと多くの方が亡くなっているはずなのです。

胃がんステージ2の場合、治療の選択肢としては基本的に手術が対象となりますが、見えているがんを手術で切除しているにも関わらず、およそ2人に1人は再発や転移などが見つかり亡くなっているということになりますから再発がいかに多いかということが分かります。

ちなみに、このデータは相対生存率となるので「がんが原因で亡くなった方のみ対象」となっていますので、老衰など別の病気で亡くなられた方は含まれておりません。

ステージ1の方でも生存率は高くなりますが解釈は同じです。ステージ3なら、もっと多くの人が再発しています。そして、上にも書きましたが最初にがんと診断された場所から遠くの臓器に再発がみつかれば、手術ができないことが多く完治は厳しいのが現状です。

生存率や腫瘍マーカーの数値だけに捉われないように

がんと言われて生存率を気にしない方はいらっしゃらないと思います。また血液検査で腫瘍マーカーの数値を気にする方もいるでしょう。しかし、数値が高いから安心、低いから絶望、と一喜一憂せずにきちんと数字の意味を把握することが大切です。

また再発の有無で考えたとき、5年生存率が何パーセントであっても、それぞれの患者さんにとっては0か100でしかないのではないでしょうか。数字を上手に参考にしつつ、それぞれの状況に応じて治療法を選択してくださればと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。今回は【がんの転移】についてご説明してきましたが次回は続編としてさらに詳しくご紹介しますので次回もぜひお付き合いください。

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