がん転移の3つの経路。悪性リンパ腫とリンパ転移の違いなど

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前回の記事で転移がんとはどういうものかをご紹介しましたので、今回はがんがどのように転移していくのかもう少し深く解説していきましょう。

がんは主に3つの経路から転移をしています。身体に入る異物を退治しているリンパ管、全身に酸素や栄養を運んでいる血管、そしてがんが発生した臓器から漏れ出てしまう播種です。

それぞれ、具体的にはどのように転移をしているか、そして転移の種類によって治療方法がどのように異なるかもご案内いたしますので、がんが転移してしまい治療法に困っている方は是非とも参考にして下さい。

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転移がんの移動パターン

リンパ管

リンパ管は体液を静脈へと一定方向に押し流していますので、リンパ管に入ったがん細胞もこの流れに沿って進んでいきます。

ところどころにリンパ節という異物をせき止める関所のような場所があり、そこで一部のがんは退治されるのですが、しぶとく生き続けたがんはリンパ節で増殖(リンパ節転移)しリンパ管をつたってさらに別のリンパ節へと進行していきます。

リンパ転移している場合の主な治療法

リンパ節転移している場合は、全身への転移を予防する目的で転移しているリンパ節を手術で切除します。臓器の周囲のリンパ節まで含めて切除するので通常より広い範囲で切除することになります。

また、転移しているリンパ節に放射線をあてる場合や原発巣から遠いリンパ節に転移がみつかっているときは抗がん剤を使用することもあります。

悪性リンパ腫とリンパ転移の違い

悪性リンパ腫は、リンパ球という血液の細胞ががん化し、全身のリンパ節に集まってしこりやこぶを作る血液がんの一種です。がん細胞がリンパ節にあるという状態は同じですが、一般的にリンパ節転移という場合は固形がんがリンパに転移している状態をさします。

血管

リンパ管は最終的に血管と合流しますので、リンパの流れだけでなく血流に乗って他の場所へと運ばれていきます。

リンパ節転移が始まるころには既に血管にもがんが入り込んでいることが多いため、リンパ節転移は近い将来他臓器転移を起こしやすいと言えるでしょう。さらに、血管やリンパ管の内側の膜にくっつき膜を破りそこで増えていくことで新たな住まいを確保します。

血管転移している場合の主な治療法

遠隔転移が見つかっている場合、リンパや血流にのってがんが移動したことになります。一度血管に転移が起これば、がんは一定の場所にとどまらず体中にばらまかれたという認識ですので全身治療である抗がん剤の治療を行います。

白血病と血管転移の違い

血管転移は臓器で発生したがん細胞が血管の中に入り込む現象ですが、白血病は、骨髄という骨の中の空間に血液成分の一つである白血球が異常に増えて骨髄を占領してしまう血液がんの一種で、異常な白血球が骨髄から血液中にあふれ出たり、骨髄が正常な血液を作れなくなっている状態です。白血病と上記の悪性リンパ腫と多発性骨髄腫を合わせて三大血液がんと言われています。

播種(はしゅ)

肺の入っている「胸腔」や腹部の臓器が入っている「腹腔」にがんが漏れ出て、胸膜や腹膜に飛び散るようにして広がる状態が播種です。

まるで小麦粉をばらまいたように飛び散った小さいがんが炎症を起こすことで膜に穴が開き、水(胸水・腹水)がたまることがあります。最初は少量ですが、がんが進行し水の量が多くなると、身体的に辛い症状がでることがあります。また完治を目指す治療が難しいことが多く、抗がん剤や排水など処置的治療にとどまるため水がたまり始めると治療としては非常に困難な状態です。

播種しやすいがんの種類と治療法

胃がん・大腸がん・膵臓がん・卵巣がん・子宮体がんなどの消化器系のがんや腹部に位置する臓器のがんが比較的播種を起こしやすいと言われています。

横隔膜より上で発生したがん:胸膜播種→胸水がたまりやすい
横隔膜より下で発生したがん:腹膜播種→腹水がたまりやすい

もともと健康な人でも少量の水がありますが、がんが進行することで水分バランスが崩れコントロールできない状態となり胸水や腹水の量が増えていきます。

胸水や腹水がたまるとさまざまな症状が出ます。例えば、胸水が多くなると肺がふくらむスペースが減り息苦しくなりますし、腹水がたまるとお腹が張る感じが強くなり胃や腸を圧迫するため食欲がおちてきます。

胸水や腹水が溜まっている際の代表的な治療(処置)は以下の4種類になります。

手術
腹膜を広範囲に切除する。腹膜の切除は技術的に高度で実施できる医師(病院)が限られている。
抗がん剤
抗がん剤を点滴で投入する。また、注射で直接投与することもある。
排水
局所麻酔を行い針をさしてバッグやボトルに排水する。
水の中には栄養が含まれているので、水を抜いたあと栄養分だけ取り出して栄養を体に戻すこともある。
利尿剤
比較的初期でまだそれほど大量の水がたまっていないときに実施されることが多い。

もし病院の先生に手術は無理だと言われたら

先日このようなご相談がありました。

「がんの診断を受けましたが、先生が手術をしてくれないんです。親戚の○○さんの時は手術して治ったのに。」

お話をうかがっていくと、この方は肺がんの診断を受け、同時に肝臓転移が見つかったということでした。肺で発生したがんが外へ飛び出し、血管やリンパ管に入り肝臓にたどり着くところまで進行しています。

通り道となった血管やリンパ管の中は微小ながん細胞でいっぱいの状態です。

手術をしたいというご希望なのですが、手術には、肉眼あるいは画像検査で”ここにがんがある”と特定できる状態であるという条件があります。血管やリンパ管の中に入ったがんはどこに運ばれていったか特定できません。

転移がんの患者様の体内は全身のあらゆる場所に見えないがんが潜んでいる状態です。こうなるとイメージとしては全身病ですね。

この状態を理解されていないと、肺と肝臓のがんを取ったらいいのでは?と思ってしまうのですが、このように全身病であることを考えれば肺と肝臓のがんを切除しただけでは不十分だということがお分かりになると思います。

仮に見えているがん(このケースでは肺と肝臓のがん)を手術でとったとしても血管とリンパ管のがんに対しては無治療ですよね。それらが今後、まるでもぐら叩きのようにボコボコと再発することが予想されます。

それならば、肺と肝臓を残したほうがメリットがあるという結論に至るため先生は手術をしてくれないのです。

このような状態だと、主治医からは抗がん剤治療の提案を受けることでしょう。場合によっては放射線や手術などをすることがありますが、それらは治癒を目指した積極的な治療ではなく、辛い症状の改善や延命を目的とした処置です。しないよりは良い…といったところでしょうか。

では、がんが進行した場合の治療法として選択されている抗がん剤治療ですが、一口に抗がん剤といっても昨今は様々な種類の治療薬剤が誕生しています。

分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤といった言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。しかしどういった仕組みでがんを退治しているのか理解されていますでしょうか?

次回はその辺りを掘り下げてステージ4の抗がん剤治療についてより詳しく説明していきましょう。

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