がんのクラスとステージを診断している病理医とは?クラスとステージの違いについて

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病理医が診断するがんのクラスとステージ

がんにはクラスやステージと言った癌の進行度合いを示す等級があるのはご存知ですよね。テレビドラマで「病理検査の結果、クラスⅣで悪性腫瘍の可能性が高いです。」といったり、「あなたの癌はステージⅣで全身に転移しています。」といった場面を見て、『クラスとステージは何が違うの?』と思った方も多いのではないでしょうか。
本日はがんのクラスとステージの違いについて分かりやすく解説をしていきます。またクラスやステージを判断している『病理医』という重要なお仕事もご紹介しましょう。万が一、自分が癌と診断された時に、今どの段階にいるのかを理解することは治療方法を選択するときに重要なことです。ぜひ参考にして下さい。

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ドクターオブドクターズと呼ばれる病理医

病院の司令塔と言われる病理医とは

あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、大きな病院にはたいていの場合「病理医」という司令塔のような医師がいます。病理医は最終的な病気の診断や、治療を行なうための最終判断を行なっています。例えば乳がんで言うと、マンモグラフィで乳がんと思われる組織が見つかったとします。しかし、このマンモグラフィだけでは、乳がんであるということが言えません。これを乳がんと確定させるのは、確定診断と呼ばれる検査をおこない、採取した組織や細胞を顕微鏡で見て「がん細胞だ」と診断する必要があります。そしてそれをする医師が病理医なのです。
さらに、がんの進行具合を表すステージや、がんの悪性度を表すクラスを決めるのも、確定診断をおこなった病理医によって行われます。

最も精度が高い診断は病理医が行うもの

がんの診断方法は様々なものが存在していますが、今のがん医療の中で最も精度が高い確定診断として位置づけられているのは、病理医が行う病理診断と呼ばれる顕微鏡レベルの診断方法です。手術の前に細胞や組織が取れない部分のがんは、「術中迅速病理診断」と呼ばれる病理診断でがんを確定させます。手術後に摘出された臓器も病理医がその妥当性(がんを取り切れたかどうかなど)をチェックしています調べるのはがんの広がりだけでなく、がんの種類、がんの悪性度、血管やリンパ管にがん細胞が入り込んでいないかどうかや今後の治療薬を決める為のがんの性質を知る検査などもしています。
例えば、乳がんでよく聞くHER2というたんぱく質は、同じ乳がんでもHER2が増加しているものもあれば、増加していないものもあります。増加している患者には、HER2だけを攻撃する薬(分子標的薬)を投与することで、がんの増殖を抑えることが出来ます。このHER2が増加しているかどうかを見極めるのも、病理医の「免疫組織化学染色」という病理診断です。
このように、がんの治療にいなくてはならない病理医は、実は全国的にかなり不足しているのです。

日本は深刻な病理医不足である

間違った治療を受けない為に是非覚えておいて下さい。現在日本には、2362名の病理医しかいません(2016年8月時点)。地方の都道府県などでは、病理医の数が10人を切る県もあるほど深刻な状況なのです。この病理医不足というのは日本にとって大きな課題となっています。
なぜなら、病理医が勤務している日しか手術が出来なかったり、検査結果の告知の遅れ、新しいテクノロジーの導入が出来ない、といった問題が起こるからです。病理医のいない治療がどれほど危ないことなのか分かって頂けたでしょうか。がんの治療を受ける際には是非「病理診断レポート」を見せて貰い説明を受けて下さい。病理診断を行っていない病院ではそれを出せないかもしれません。

がんのクラスについて

がんのクラスとは

病理医が診断するがんの性質のひとつにクラスという分類方法があります。これは、パパニコロウ分類と呼ばれる分類法で、腫瘍の悪性度をⅠからⅤの5段階に分類します。つまりクラスとは腫瘍が悪性かどうかを判断する主な基準となっています。よく次の項目で紹介するステージと勘違いする人が多いですが、ステージとはまったく異なります。通常、クラスは細胞診と呼ばれる検査方法で診断を行ないます。細胞診は、針で吸引したりブラシでこすったりして細胞を採取したり、尿や痰などの中に剥がれ落ちてくる細胞を顕微鏡で調べる検査です。生検などに比べて患者様の負担が少ないという特徴があります。
検査で調べた結果、一定の基準に沿って腫瘍のクラスが確定します。

がんのクラス表

パパニコロウ分類法
クラスⅠ:正常細胞(異常なし)
クラスⅡ:異型細胞は存在するが、悪性ではない
クラスⅢ:
  Ⅲa 軽度・中等度異型性(悪性を少し疑う)  
  Ⅲb 高度異型性(悪性をかなり疑う)
クラスⅣ:悪性細胞の可能性が高い、あるいは上皮内がん
クラスⅤ:悪性と断定できる異型細胞がある
(正常・良性、良悪性鑑別困難、悪性疑い、悪性という4段階の分類法を使うこともあります)

クラス診断でがんと言われたらどうするか

上の表から、クラスⅠ、Ⅱは良性の腫瘍で、クラスⅢは灰色病変、つまり良性・悪性の判断がつかないものです。クラスⅣ、Ⅴは悪性、すなわち「がん」ということです。クラスⅢの場合は、数ヶ月後にもう一度細胞診の検査が行われますが、針生検や外科生検が行われることもあります。クラスⅣの場合は、悪性と判断されたのですが、クラスⅤではありません。極めて疑わしいですが、まだがんでない可能性があるかもしれません。慌てて手術を受けずに、針生検や外科生検を受けるようにしましょう。クラスⅤの場合は、残念ながらがんであると言えます。
しかし、浸潤がんであるかどうかや抗がん剤治療を行うかどうかの治療計画を建てる為にも、針生検や外科生検を受けるようにしましょう。ここまで読み進めている方なら分かっていると思いますが、必ず病理医のいる病院で検査を受けるようにして下さい。そして念の為、生検をしたら必ず結果のコピーをもらって保存しておくようにして下さい。後々、セカンドオピニオンを受けたり、医療コーディネーター等にがん相談を受ける際に必要になることがあるかもしれません。

がんのステージについて

がんのステージとは

クラスの診断が行われた後に、その進行具合がどうなっているかをステージで表します。腫瘍ががんかどうかを見極める分類がクラスで、そのがんがどれくらい進んでいるか見極める分類がステージというわけです。がんの進行度は「TMN分類」と呼ばれる分類方法で分類され、「TMN分類」は以下の基準をもとに分かれています。

・がんの大きさ(広がり)(T0~T4)
・リンパ節への転移の有無(N0~N4)
・他の臓器への転移(M0、M1)

そして、ステージはその「TMN分類」を元に0から4の5段階に分かれています。数字が進むほどにがんが進行していることになります。

がんのステージ分類表

ステージ0 がん細胞が粘膜内に留まっており、リンパ節に転移していない。
ステージ1 がんの腫瘍が少し広がっているが筋肉の層までで留まっており、リンパ節に転移はしていない。
ステージ2 リンパ節に転移はしていないが、筋肉の層を超えて浸潤している。または、がんは広がっていないがリンパ節に少し転移している。
ステージ3 がんの腫瘍が浸潤しており、リンパ節への転移が見られる。
ステージ4 がんが離れた他の臓器へ転移している。

ステージが低いほど生存率は高くなる

ステージが低ければ、5年生存率と呼ばれる指標は高くなります。しかし、この5年生存率というデータでは、目に見えないマイクロ転移と呼ばれる小さながんの転移を見逃しがちです。がん治療を行なってから数年後、実は体内に残存していたり転移していたがん細胞が大きくなり再発してしまったがんと闘っている患者様も、この5年生存率のデータには含まれています。なので、医者から5年生存率や10年生存率といったデータを見せられて、ほっと安心していたら何年後かに再発したがんに苦しめられるということも十分に有ります。
完全に体内からがん細胞を取り切るためには、マイクロ転移をも叩く免疫療法や遺伝子医療などの先端治療も視野に入れて考えていく必要があると思っています。

まとめ

がんのステージやクラスの違い、病理医の存在の大切さについて書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。がんと聞けば「早期発見・早期治療が大事」と誰もが口を揃えて言います。しかし、見つかったがんは、多くの場合すでにがんが出来てから10年は経過しています。今更、2~3ヶ月治療が遅くなったからと言って病状がすぐに悪化するものでもありません。(2~3ヶ月で病状が悪化するような悪性の強いがんの場合、すぐに治療しても助かる可能性はとても低いのが現状です)
あせらずに適切な病理医のいる病院で検査を再度して貰い、他の病院でセカンドオピニオンを求めるか、がん専門の医療コンサルタントに治療方法のアドバイスを貰い、その中で自分に合うと思えるがんの治療方法を見つける様にしてください。ステージが進んでいたとしても、治療方法が何もないということは決してありません。がんを倒すことが出来なくとも、糖尿病のように共存していくという道もあります。
決して安易に医者に治療方法をまかせることなく、多くの意見を求めるようにしてみて下さい。



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