抗がん剤治療(化学療法)の特徴
広範囲に作用してがん細胞の増殖を抑える
細胞の増殖を抑える抗がん剤を用いて、がんの増殖を抑えたり、転移や再発を防ぐ目的で治療が行われます。
手術や放射線は局所的な治療であるのに対して、抗がん剤はより広範囲に治療の効果が及ぶので、血液やリンパのがんのように広い範囲の治療を行う必要があるときに用いられます。
完全に治すことができない場合でも、がん細胞を小さくすることで延命効果や痛みの症状などを和らげることが期待できます。
がんに対する薬は現在100種類近くあり、単独の薬剤で治療する場合と、複数の抗がん剤を組み合わせて治療する場合があります。
錠剤やカプセルなどの経口投与や、点滴や注射で直接体内に注入する方法があります。
抗がん剤治療(化学療法)のメリットとデメリット
手術では切除できない血液やリンパのがんを治療できる
抗がん剤のメリットは、手術では切除できない血液やリンパのがんに対して治療を行えるということです。
がんの種類によって抗がん剤だけで治療を行うこともあれば、手術や放射線などの他の治療と合わせて補助的に抗がん剤治療を行うこともあります。
手術で切除するには腫瘍が大きくなりすぎてしまったがんを縮小させたり、転移している可能性の高いがんに対して全身作用するので転移や再発を防止することができます。
現在では多くの病院で通院治療が行えるようになり、日常生活を送りながら、仕事を続けながら治療を受けることが可能となりました。家族と一緒に過ごすことで精神的なストレスを緩和したり、QOL(生活の質)を保ちながら治療を続けられるのは大きなメリットと言えるでしょう。
常に新たな抗がん剤が開発されており、治療範囲の拡大や薬剤効果の向上が期待できます。
がんの部位によって治癒可能ながんと、効果が期待できないがんがある
抗がん剤は血液のがんと呼ばれる白血病や、悪性のリンパ腫、その他にも精巣がんや絨毛がんといったがん腫瘍に対しても効果を発揮します。
小児の急性リンパ性白血病に関しては5年生存率が70%以上という治療成績が出ており、抗がん剤で治療ができる代表的な症状となります。
その他にも抗がん剤が良く効くがんとして、乳がんや卵巣がん、骨髄腫などは腫瘍の縮小や消失が期待できます。前立腺がんや甲状腺がん、胃がん、肺がん、大腸がん、子宮がんや胆道がん等に対しても効果があり症状を和らげさせる効果が確認されています。
それぞれの部位によって効果のある抗がん剤が異なるので、治療を受ける際に主治医から説明を受けると良いでしょう。
しかし中には抗がん剤の効果が期待できないがんもあります。腎がんや膵がん、肝がんなどがその代表で、腫瘍の縮小させることも難しいと言われています。
肝がんに対しては、動脈にカテーテルを通してがん細胞へ抗がん剤を注入する動注化学療法と呼ばれる治療法が開発されましたが、病院間の技術の格差が大きく標準治療とはなっていません。
強い副作用が出る可能性がある
抗がん剤を使う上で避けられないのが副作用です。
主な副作用として、吐き気、発熱、便秘、下痢、疲れやすい、だるい、食欲不振、口内炎、脱毛(抜け毛)、手足のしびれ、貧血、腎臓や肝臓の障害などが挙げられます。
脱毛や吐き気については、抗がん剤治療を受けると決めてから想定していたのでまだ我慢できるという方もいらっしゃいますが、酷い口内炎によって喋ることも食べることもつらいという訴えも多く、病院によっては口腔ケアを実施しているところもあります。
抗がん剤の副作用が強い理由として、抗がん剤の効果が出てくる量と、副作用が出てくる量の幅が非常に狭い、または副作用が先に出てくる場合があるからです。
一般に使われている風邪薬などは、用法・用量を守って飲むと解熱や咳止めの効果が出ます。その量を超えて飲むと、今度は有害な効果が出てきます。だからといって10倍程度の服薬をしても市販薬で命を落とすことはまずありません。
しかし、抗がん剤の場合、副作用が出てきてから更に投与して、やっと本来の効果が出るといった場合もあります。
完治は難しいが抗がん剤で進行を抑えたり延命できるがんの場合だと、その効果よりも副作用によって苦しむケースが少なくありません。
がんを治療するのか、生活の質を改善するのか
抗がん剤でがんを消失させて完治させるケースがある一方で、抗がん剤の副作用により苦しみ続けている患者様もいます。
がん細胞を消すことを目的とするのか、それともがんによる症状を緩和させて普段通り暮らせるようにするのか、抗がん剤治療の目的は何なのかを主治医の方とよく話し合った方が良いでしょう。
がんの治療は日々進歩しており、さまざまな治療法が登場していますが、完璧な治療法というのはありません。
いくつかの治療法を組み合わせて、欠点を補いあって治療する「がんの集合的治療」が大事だと考えられています。