手術・外科療法の特徴
がん病巣の切除が可能であれば積極的に行われる治療法
がんの手術・外科療法は白血病のような全身に広がるものを除き、ほとんどすべてのがんに対して第一に選択される治療法です。
がんが一部に留まっている初期から中期のがんにはもっとも有効な選択肢と言えるでしょう。
その反面、目に見えないレベルの極小さな転移(マイクロ転移)は治療することが出来ません。
また手術の多くは麻酔をかけて行ないますので、手術以前に麻酔に耐えられない場合は手術の適応外となります。
腫瘍部位を切除することによって生体機能が損なわれたり、術後障害などQOL(生活の質)の面でどうしてもマイナスになる可能性はつきまといます。
手術のメリット・デメリット
がん細胞がどこにも転移していなければ7割の確率で完治する
がん手術のメリットは、がんの組織を局所的に取り除くことが出来る点が上げられます。がん細胞を完全に取り除くことが出来ればがんは完治しますが、現実的には目に見えないレベルの小さながん細胞が転移していることも多いようです。
一説によると早期の胃がんの場合は、手術によってほぼ100%の確率で完治すると言われています。しかし5年後、10年後に3割の方のがんが再発しているという事実から考えると、手術が成功したら終わり、というような簡単な病気では無いということです。
しかし、がんは悪者で悪いものは取ってしまうのが一番いいという風潮が強く、日本でがんの手術件数が多くなる大きな理由ともなっています。
手術のメリットは他にもあり、抗がん剤や放射線治療に比べて副作用が少ないという点があげられます。
しかし臓器そのものを摘出してしまうので後遺症が残ること(臓器不全)があり、絶対に安全とは言いきれません。
手術をするとがんが暴れ出す?
がん手術のデメリットをあげてみると、「手術をするとがんが飛ぶ」というのを聞いた事がある方もいらっしゃると思いますが、手術したことで免疫力・抵抗力が下がり、今まで小さかったがんが大きくなったり、がんが芽吹いてしまうことがあるのです。
また手術時にメスの先端からがん細胞が別の場所に飛び、他の臓器へ転移するという可能性もあります。
そして、手術は体にかかる負担がとても大きいです。
近年では内視鏡手術の技術が向上して、治療の適応範囲が広がり、以前と比べると体の負担は少なくなりましたが、開腹手術のような大きな手術であれば、どうしても社会復帰に時間がかかってしまいます。
例えば、たった2センチの肺がんを手術で切除するために、脇腹を30センチも切らなければならない、といったこともあります。
その結果、今までと同じような生活を送ることが出来なくなってしまったり、手術後に長期間のリハビリが必要になってしまったりします。
がんの状況により手術不可能なことがある
臓器によっては、複数のがんがあると手術ができないといったケースもあります。
例えば、呼吸によって体内に酸素を取り入れるための臓器である肺は、右肺が上葉・中葉・下葉、左肺が上葉・下葉の合計5つの部位に分かれています。
もし肺にがんが発生してしまうと、がん細胞ができた肺葉をそのまま切除することになります。
つまり、2つの肺葉に一つずつがんが出来てしまったら、肺葉を2つとも取らなければならないのです。
もし正常時の肺活量が4000ccだった場合、肺葉を1つ切除すると肺活量は20%も減り3200ccになります。2つも取ってしまうと40%も減って、たった2400ccになってしまうのです。
急に40%も肺活量が減ってしまうと、手術から目覚めたとたんに富士山の7合目にいるのと同じような息苦しさを味わうことになってしまいます。
そのため複数の肺葉にがんが出来てしまった場合は、手術以外の治療法を選択せざるをえないということもあるわけです。
さらに、糖尿病の場合は血糖値が高いと傷がふさがりにくくなるため、手術そのものができません。
確かな手術を受けたいのなら情報収集が必須
日本の健康保険制度は、いつでもどこでも誰でも同じ治療が受けられるということが目的であり大きなメリットですが、国内の医師全員が同じ技量を持っているかというとそうではありません。
大学を卒業したばかりの新米医師もいれば、国内最高の手術数を誇る天才外科医もいて、研究ばかりを行なっている名ばかりの名誉教授も少なからず存在しています。
より確かな手術を受けたいということであれば、このがんならどこの病院のどの先生が得意か、といった情報の収集は必須となります。